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損害保険料率算出機構による後遺障害等級の認定
第0 目次
第2 後遺障害の等級認定の手続
第3 後遺障害の等級認定の基準
第4 併合,相当及び加重
第5 後遺障害等級別認定件数,及び後遺障害等級の認定率
第6 後遺障害等級3級以上の認定件数の推移
第7の1 後遺障害等級認定申請の所要時間
第7の2 後遺障害等級認定票の文言例
第7の3 後遺障害の等級認定に関する説明資料
第8 高次脳機能障害
第9 「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」の記載内容
第10 神経系統の機能及び精神の障害に関する障害等級認定基準
第11 弁護士山中理司への問合せ方法
*0 損害保険料率算出機構HPに「当機構で行う損害調査」が載っています。
*1 以下のページも参照して下さい。
(交通事故)
① 症状固定及び後遺障害診断書
② XP,CT,MRI等
③ 自賠責保険の保険金及び後遺障害等級
④ 後遺障害としてのむち打ち,頸椎捻挫,神経麻痺等
⑤ 後遺障害としての関節の可動域制限
⑥ 交通事故の示談をする場合の留意点
⑦ 保険会社の説明義務
⑧ 任意保険の示談代行制度
(労災保険)
⑨ 労災保険
⑩ 労災保険の給付内容
⑪ 労災保険に関する不服申立方法
⑫ 第三者行為災害としての交通事故
*2 国土交通省HPに「損害保険料率算出機構の業務概要」が載っています。
*3 幻冬舎HPに「後遺障害の審査を行う「損害保険料率算出機構」の問題点」,及び「損害保険料率算出機構の「損害調査部門」の内情」が載っています。
*4 部位別の後遺障害等級のレベルについては,以下のHPが分かりやすいです。
① 後遺障害等級認定NAVI(みお総合法律事務所)の「部位別後遺障害と等級」
② 八文字社会保険労務士行政書士事務所HPの「後遺障害の系列と序列(後遺障害等級表)」
*5 にわ法律事務所HPに「平成29年半ばから、自賠責での後遺障害等級認定が厳しくなったようです」,及び「調査事務所取付回答書類が開示されるようになりました」が載っています。
*6 日本整形外科学会HPに「整形外科/運動器 症状・病気をしらべる」が載っています。
*7 沖縄協同病院HPの「頭部MRIの見方」では,T1,T2,DWI,FLAIR,SWI,MRA,BPASが要領よく説明されています。
*8 自動車総合安全情報HPの自賠責保険ポータルサイトに「支払までの流れと請求方法」が乗っています。
*9 看護ルーHPの「関節可動域訓練」に,指,手首,肘,前腕,肩,つま先,アキレス腱,足,膝,股の関節可動域訓練(ROM訓練)を説明する動画が載っています。
*10 日弁連交通事故相談センターHPに「目に見えにくい後遺障害(高次脳機能障害,PTSD,RSD)」が載っています。
*11 交通関係訴訟の実務(著者は東京地裁27民(交通部)の裁判官等)に217頁ないし232頁に「後遺障害の諸問題3(高次脳機能障害,軽度外傷性脳損傷(MTBI))」が載っていて,233頁ないし250頁に「後遺障害の諸問題4(低髄液圧症候群・RSD(CRPS)・PTSD」が載っています。
*12 書式として,「自賠責保険後遺障害診断書」,「神経学的所見の推移について」及び「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」を掲載しています。
*13 交通事故の赤い本講演録2019年49頁ないし84頁に,「非器質性精神障害をめぐる問題」が載っています。
第1 損害保険料率算出機構
(1) 後遺障害の等級認定とは,後遺障害が1級から14級までのどの等級に当たるのかを認定することをいいますところ,自賠責保険では,後遺障害の等級認定は,損害保険料率算出機構(損保料率機構,GIROJ)が行っています。
自賠責保険では本来,損害額を調査して保険金額を決定するのは自賠責保険会社でありますものの,損害額の認定が会社ごとに異なるようでは,被害者の公平な救済の要請に沿わない結果を招くおそれがあります。
そこで,損害保険料率算出団体に関する法律(昭和23年7月29日法律第193号)に基づき設立された特殊法人である,損害保険料率算出機構自賠責損害調査センターの調査事務所が,後遺障害等級認定等の損害調査を取り扱っています。
(2) 損害保険料率算出機構は,平成14年7月1日,損害保険料率算定会及び自動車保険料率算定会(=自算会)が再統合して発足しました。
(3) 平成28年4月1日現在の職員数は2194人です。
(4) 損害保険料率算出機構のディスクロージャー資料が,同機構HPの「刊行物」に掲載されています。
2 自賠責損害調査事務所
(1) 自賠責損害調査事務所では,被害者が提出した「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」(=自賠責保険後遺障害診断書)を元に,従前の治療経過について,診断書,診療報酬明細書を取りそろえ,場合によっては,患部のXP,MRI,CT等の検査結果を取り付けた上で,各調査事務所の顧問医の意見を参考にして,後遺障害等級認定の担当者が等級を決めます。
(2) 損保料率機構の地区本部・自賠責損害調査事務所の所在地及び電話番号は,同機構HPの「地区本部および自賠責損害調査事務所」に掲載されています。
全国に7箇所の地区本部があり,54箇所の自賠責損害調査事務所があります。
3 大阪の自賠責損害調査事務所
(1)ア 大阪府には,①大阪第一自賠責損害調査事務所(傷害部分の担当)及び②大阪第二自賠責損害調査事務所(後遺障害部分の担当)があります。
住所はいずれも「〒530-0001 大阪市北区梅田3-4-5 毎日インテシオ6階」であり,電話番号はいずれも「06-6455-0267」です。
イ 外貌醜状について後遺障害の等級申請をした場合,原則として毎日インテシオ6階の大阪第2自賠責損害調査事務所に行き,同事務所の調査員に外貌醜状の状況を確認してもらうこととなります。
(2) 毎日インテシオ7階には近畿本部があります。
(3) 毎日インテシオと地下で直結する梅田ターミナルには,JR大阪駅,JR北新地駅,阪急,阪神,地下鉄御堂筋線の各梅田駅,地下鉄谷町線の東梅田駅,地下鉄四つ橋線の西梅田駅があります(株式会社毎日ビルディング大阪本社HPの「毎日インテシオのアクセス」参照)。
4 損害保険料率算出機構の,法律に基づく業務範囲
損害保険料率算出機構の業務範囲を定める損害保険料率算出団体に関する法律(昭和23年7月29日法律第193号)7条の2は,以下のとおりです。
5 JA共済連の後遺障害認定手続
(1) JA共済連は従前,独自に交通事故に関する損害調査業務を行ってきました。
(2) JA共済連は,平成30年10月までに,全都道府県において,交通事故に関する損害調査業務を損害保険料率算出機構に移管しました(にわ法律事務所HPの「JA共済連の後遺障害認定手続きについて 愛知県では平成29年10月から変わります!」参照)。
第2 後遺障害の等級認定の手続
1 後遺障害等級の認定は以下の場合になされます。
① 被害者からの被害者請求がなされた場合(自賠法16条1項)
② 賠償義務者,つまり自賠責保険の被保険者からの加害者請求がなされた場合(自賠法15条)
③ 一括払の前提として自賠責保険会社から損害保険料率算出機構に対し,任意保険金の支払の前に後遺障害等級の有無・程度の認定を請求するという,いわゆる事前認定の請求がなされた場合
2 一括払事案の場合,被害者は任意保険会社の事前認定手続のために,後遺障害診断書等の書類を任意保険会社に提出することになります。
この場合,損害保険料率算出機構の認定結果は直接被害者には通知されませんから,被害者は,任意保険会社から事前認定結果を伝えてもらう必要があります。
3 事前認定では,被害者の後遺障害等級の有無・程度だけでなく,以下の事項も確認しています。
① 自賠責保険契約が有効に存在しているかどうか。
② 任意保険会社の損害支払額が自賠責保険の支払対象となるかどうか。
③ 重過失減額があるかどうか。
4 被害者請求をしたときに送付される説明書面によれば,自賠責損害調査事務所による損害調査の流れは以下のとおりです。
① 請求者は、損害保険会社等、自賠責保険(共済)への請求書類を提出します。
② 損害保険会社等は、請求書類に不備がないか確認のうえ、自賠責損害調査事務所へ送付します。
③ 自賠責損害調査事務所では、請求書類に基づいて、事故発生状況、支払の的確性(自賠責保険(共済)の 対象となる事故かどうか、また、傷害と事故との因果関係など)および発生した損害の額などを公正かつ中立な立場で調査を行います。
請求書類の内容だけでは事故に関する事実確認ができないものについては、
(a) 事故当事者に事故状況照会
(b) 病院照会
(c) 事故現場調査
など必要な調査を行います。
④ 自賠責損害調査事務所は、損害保険会社等に調査結果を報告します。
⑤ 損害保険会社等は、支払額を決定し、請求者に支払います。
5(1) 自賠責保険調査事務所による後遺障害等級認定は,書面中心主義であり,他覚所見至上主義です。
つまり,自賠責保険後遺障害診断書等の書面に書いていない症状は審査の対象にしませんし,自覚症状は参考程度の扱いであって,他覚所見(例えば,画像所見,電気生理学的所見及び神経学的所見)が非常に重視されます。
(2) 自賠責の後遺障害申請で原則として面接を要する障害は以下のとおりです(交通事故被害者を2度泣かせないHPの「後遺障害認定における面接を必要とするとき」参照)。
①眼瞼(がんけん)の欠損及び運動障害
②耳殻(じかく)の欠損障害
③鼻の欠損障害
④外貌(頭部・顔面・頚部)の醜状障害
⑤上・下肢の醜状障害
⑥露出面以外の醜状障害
第3 後遺障害の等級認定の基準
1 自賠責保険の場合,後遺障害等級の認定は原則として,労災保険における障害の等級認定の基準に準じて行うこととされています(「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)「第3 後遺障害による損害」参照)。
2(1) 労災保険における障害の等級認定は,以下の基準に基づいてなされます。
① 一般の障害
・ 昭和50年9月30日付け基発第565号別冊「障害等級認定基準」(労働省労働基準局長通知)
「基本通達」といわれるものです。
② 神経系統の機能又は精神の障害
・ 平成15年8月8日付け基発第0808002号別添「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」(厚生労働省労働基準局長通知)
③ 関節の機能障害
・ 平成16年6月4日付け基発第0604003号別紙「せき柱及びその他の体幹骨,上肢並びに下肢の傷害に関する障害等級認定基準・別添関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」(厚生労働省労働基準局長通知)
④ 眼の障害
・ 平成16年6月4日付け基発第0604004号別紙「眼の障害に関する障害等級認定基準」(厚生労働省労働基準局長通知)
⑤ 胸腹部臓器の障害
・ 平成18年1月25日付け基発第0125002号別紙「胸腹部臓器の障害に関する障害等級認定基準」(厚生労働省労働基準局長通知)
・ 「胸腹部臓器の障害に関する障害等級認定基準」と題するパンフレットがあります。
⑥ 外貌醜状の障害
・ 平成23年2月1日付け基発第0201第2号別紙「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準」(厚生労働省労働基準局長通知)
・ 「顔などにやけどや傷跡が残った場合の障害等級の見直しについて」と題するパンフレットがあります。
(2) 平成16年6月4日付の③及び④の通達は,厚生労働省HPの「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢、眼の障害等級認定基準の一部改正について」に載っています。
(3) 労働省労働基準局の以下の文書を掲載しています。
① 地方労災医員制度の運用細目について(昭和62年12月22日付の労働省労働基準局長の通達)
② 地方労災医員制度の運用上の留意点について(昭和62年12月22日付の労働省労働基準局労災補償課長の事務連絡)
③ 労災認定における医師の作成する意見書,鑑定書等の早期収集のための医師会,労災病院等との連携について(平成8年3月29日付の労働省労働基準局長の通達)
3 損害保険料率算出機構による後遺障害の等級認定は,基本通達及び認定基準に準じて行われていますから,基本通達等に基づけばこういう判断ができるという議論の仕方をしない限り,自賠責保険の手続において被害者側の主張が認められることはなかなかありません。
ただし,裁判所における損害の算定方法自体は,基本通達等の考え方に拘束されるわけではありません(最高裁平成18年3月30日判決)。
第4 併合,相当及び加重
(1) 後遺症につき,5級以上のものが複数あれば一番重い等級を3等級繰り上げ,8級以上のものが複数あれば一番重い等級を2等級繰り上げ,13級以上のものが複数あれば一番重い等級を1等級繰り上げられることとなり,繰り上げられた等級を併合等級といいます。
ただし,14級の後遺障害がいくらあっても,一番重い等級が繰り上げられることはありません。
(2) 併合の扱いを受けるのは,あくまでも障害の系列が異なる場合に限られるのであって,同じ系列の障害は上位等級の内容が下位等級の内容を含んでいると考えられますから,併合の扱いは受けません。
2 相当
(1) 自賠法施行令別表第1の備考,及び別表第2の備考6には,「各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって,各等級の後遺障害に相当する者は,当該等級の後遺障害とする。」と規定されていますから,どの系列にも属さない障害であっても等級認定される場合があり,「相当等級」といいます。
(2) 自賠責保険において認められる相当等級の例は以下のとおりです。
① 嗅覚喪失又は味覚脱失(12級相当)
② 嗅覚減退(14級相当)
③ 外傷性散瞳(11級,12級又は14級相当)
④ 脊柱に中程度の変形を残すもの(8級相当)
3 加重
既に身体障害のあった者がさらに同一部位について障害の程度を加重したときは,加重後の等級に応ずる保険金額から既にあった障害の等級に応ずる保険金額を控除した金額が保険金額となります。
第5 後遺障害等級別認定件数,及び後遺障害等級の認定率
(1) 平成26年度
損害保険料率算出機構HPの「自動車保険の概況」に掲載されている,平成27年度「自動車保険の概況」の末尾38頁によれば,平成26年度の後遺障害等級別認定件数の実績は以下のとおりであり,合計6万2350件です。
・ 別表第一(介護を要する後遺障害)
1級:881人(1.41%)
2級:460人(0.74%)
・ 別表第二(その他の後遺障害)
1級:35件(0.06%)
2級:93件(0.15%)
3級:314件(0.50%)
4級:199件(0.32%)
5級:423件(0.68%)
6級:538件(0.86%)
7級:1013件(1.63%)
8級:1941件(3.12%)
9級:2160件(3.47%)
10級:2076件(3.33%)
11級:4348件(6.98%)
12級:1万665件(17.12%)
13級:520件(0.83%)
14級:3万6639件(58.81%)
(2) 平成27年度
損害保険料率算出機構HPの「自動車保険の概況」に掲載されている,平成28年度「自動車保険の概況」の末尾38頁によれば,平成26年度の後遺障害等級別認定件数の実績は以下のとおりであり,合計6万2009件です。
・ 別表第一(介護を要する後遺障害)
1級:874件(1.41%)
2級:462件(0.75%)
・ 別表第二(その他の後遺障害)
1級:36件(0.06%)
2級:108件(0.17%)
3級:316件(0.51%)
4級:180件(0.29%)
5級:405件(0.65%)
6級:528件(0.85%)
7級:1008件(1.63%)
8級:1984件(3.20%)
9級:2200件(3.55%)
10級:2020件(3.26%)
11級:4369件(7.05%)
12級:1万592件(17.08%)
13級:592件(0.95%)
14級:3万6335件(58.6%)
(3) 平成28年度
損害保険料率算出機構HPの「自動車保険の概況」に掲載されている,平成29年度「自動車保険の概況」の末尾37頁によれば,平成28年度の後遺障害等級別認定件数の実績は以下のとおりであり,合計5万9642件です。
・ 別表第一(介護を要する後遺障害)
1級:848件(1.42%)
2級:420件(0.70%)
・ 別表第二(その他の後遺障害)
1級:40件(0.07%)
2級:127件(0.21%)
3級:251件(0.42%)
4級:172件(0.29%)
5級:395件(0.66%)
6級:550件(0.92%)
7級:970件(1.63%)
8級:1951件(3.27%)
9級:2168件(3.64%)
10級:1892件(3.17%)
11級:4408件(7.39%)
12級:1万271件(17.22%)
13級:546件(0.92%)
14級:3万4633件(58.07%)
2 後遺障害等級の認定率
(1) 平成26年度
損害保険料率算出機構の平成27年度「自動車保険の概況」の末尾36頁によれば,平成26年度に自賠責損害調査事務所で受け付けた自賠責保険の請求事案の件数は132万6871件です。
そのため,自賠責保険の請求と後遺障害等級認定との間に期間のずれを無視して計算した場合,後遺障害等級が認定されるのは6万2350件/132万6871件=約4.69%となり,13級以上の後遺障害等級が認定されるのは2万5711件/132万6871件=約1.94%となります。
(2) 平成27年度
損害保険料率算出機構の平成28年度「自動車保険の概況」の末尾36頁によれば,平成27年度に自賠責損害調査事務所で受け付けた自賠責保険の請求事案の件数は132万8116件です。
そのため,自賠責保険の請求と後遺障害等級認定との間に期間のずれを無視して計算した場合,後遺障害等級が認定されるのは6万2009件/132万8116件=約4.67%となり,13級以上の後遺障害等級が認定されるのは2万5674件/132万8116件=約1.93%となります。
(3) 平成28年度
損害保険料率算出機構の平成29年度「自動車保険の概況」の末尾35頁によれば,平成28年度に自賠責損害調査事務所で受け付けた自賠責保険の請求事案の件数は131万1869件です。
第6 後遺障害等級3級以上の認定件数の推移
1 介護を要する後遺障害等級(自賠法施行令別表第一)
(1) 後遺障害等級1級
平成14年:24件,平成15年:399件,平成16年:782件
平成17年:917件,平成18年:968件,平成19年:1018件
平成20年:1036件,平成21年:1019件,平成22年:903件
平成23年:894件,平成24年:834件,平成25年:820件
平成26年:881件,平成27年:874件,平成28年:847件
平成29年:856件
(2) 後遺障害等級2級
平成14年:2件,平成15年:124件,平成16年:301件
平成17年:376件,平成18年:444件,平成19年:472件
平成20年:516件,平成21年:506件,平成22年:546件
平成23年:495件,平成24年:436件,平成25年:431件
平成26年:460件,平成27年:462件,平成28年:420件
平成29年:433件
2 介護を要しない後遺障害等級(自賠法施行令別表第二)
(1) 後遺障害等級1級
平成10年:1350件,平成11年:1371件,平成12年:1405件
平成13年:1458件,平成14年:1484件,平成15年:986件
平成16年:493件,平成17年:284件,平成18年:193件
平成19年:101件,平成20年:78件,平成21年:72件
平成22年:66件,平成23年:46件,平成24年:42件
平成25年:41件,平成26年:35件,平成27年:36件
平成28年:40件,平成29年:38件
(2) 後遺障害等級2級
平成10年:384件,平成11年:400件,平成12年:346件
平成13年:410件,平成14年:541件,平成15年:402件
平成16年:240件,平成17年:165件,平成18年:162件
平成19年:148件,平成20年:127件,平成21年:145件
平成22年:141件,平成23年:133件,平成24年:119件
平成25年:111件,平成26年: 93件,平成27年:108件
平成28年:127件,平成29年:100件
(3) 後遺障害等級3級
平成10年:316件,平成11年:281件,平成12年:305件
平成13年:366件,平成14年:489件,平成15年:377件
平成16年:355件,平成17年:377件,平成18年:353件
平成19年:385件,平成20年:415件,平成21年:407件
平成22年:371件,平成23年:364件,平成24年:345件
平成25年:318件,平成26年:314件,平成27年:316件
平成28年:251件,平成29年:288件
3 合計
平成10年:2050件,平成11年:2052件,平成12年:2056件
平成13年:2234件,平成14年:2540件,平成15年:2288件
平成16年:2171件,平成17年:2119件,平成18年:2120件
平成19年:2124件,平成20年:2172件,平成21年:2149件
平成22年:2027件,平成23年:1932件,平成24年:1776件
平成25年:1721件,平成26年:1783件,平成27年:1796件
平成28年:1686件,平成29年:1715件
第7の1 後遺障害等級認定申請の所要時間
そのため,被害者請求の書類を提出してから後遺障害の審査結果が出るまでに通常,1ヶ月半ぐらいかかります。
2(1) 過失割合が7割以上となる可能性がある場合,詳細な事故状況を記載した書面の提出が求められるため,1ヶ月以上,余分に時間がかかることが多いです。
(2) 損害保険料率算出機構HPの「事故状況等についてのご照会」には,「このお問い合わせは、事故発生状況の確認を行うことを目的に、事故の当事者の方々にお送りしています。これは、事故の状況等によっては、自賠責保険のお支払いの対象とならない場合や、お支払いできる額が変わってくる場合があるためです。」と書いてあります。
3 損害保険料率算出機構が作成している「平成28年度自動車保険の概況」(損害保険料率算出機構HPの「刊行物」に載っています。)によれば,自賠責損害調査事務所における損害調査所要日数は以下のとおりです。
① 死亡事案の場合
30日以内が79.8%,31日~60日が10.5%,61日~90日が3.6%,90日超が6.2%
② 後遺障害事案の場合
30日以内が81.9%,31日~60日が10.5%,61日~90日が4.4%,90日超が3.7%
③ 傷害事案の場合
30日以内が98.7%,31日~60日が0.9%,61日~90日が0.3%,90日超が0.2%
第7の2 後遺障害等級認定票の文言例
1.左大腿骨骨幹部骨折に伴う左股関節の機能障害については,後遺障害診断書上,主要運動である外転・内転の可動域が健側(右股関節)の可動域角度の1/2以下に制限されていることから,「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」として別表第二第10級11合に該当するものと判断します。
2.左大腿骨骨幹部骨折および左脛骨近位部骨折に伴う左膝関節の機能障害については,後遺障害診断書上,その可動域が健側(右膝関節)の可動域角度の3/4以下に制限されていることから,「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」として別表第二第12級7号に該当するものと判断します。
3.左足関節の機能障害については,後遺障害診断書上,その可動域が健側(右足関節)の可動域角度の3/4以下に制限されていないことから,認定基準上,自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断します。
前記1.および2.の障害は,同一系列の障害であるため,別表第二備考6により,併合の方法を用いて別表第二第9級相当と判断します。
○下肢の短縮障害で後遺障害13級が認定される場合における,後遺障害等級認定票の文言は,以下のような感じです。
左下肢の短縮障害については,提出の画像上,左大腿骨骨幹部骨折が認められ,これにより左下肢は健側(右下肢)と比較して,1センチメートル以上の短縮が生じたものと捉えられることから,「1下肢を1センチメートル以上短縮したもの」として別表第二第13級8号に該当するものと判断します。
○神経症状で後遺障害14級が認定される場合における,後遺障害等級認定票の文言は,以下のような感じです。
1.頚椎捻挫後の○○,○○の症状については,提出の頚部画像上,本件事故による骨折等の明らかな外傷性変化は認め難く,その他診断書等からも,症状の裏付けとなる客観的な医学的所見には乏しいことから,他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられません。
しかしながら,治療状況,症状推移なども勘案すれば,将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから,「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断します。
2.腰椎捻挫後の○○,○○の症状については,提出の頚部画像上,本件事故による骨折等の明らかな外傷性変化は認め難く,その他診断書等からも,症状の裏付けとなる客観的な医学的所見には乏しいことから,他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられません。
しかしながら,治療状況,症状推移なども勘案すれば,将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから,「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断します。
前記1.および2.の障害を併合した結果,別表第二併合第14級と判断します。
○神経症状が後遺障害14級が該当しないと判断された場合における,後遺障害等級認定票の文言は,以下のような感じです。
頚椎捻挫,頚部挫傷等の頚部から右上肢の知覚障害と疼痛(痺れるような痛み),重いものが持てない等の症状については,提出の頚部画像上,本件事故による骨折や脱臼等の明らかな外傷性の異常所見は認められず,後遺障害診断書上,有意な神経学的異常所見は認められないことから,他覚的に神経系統の障害が証明されたものとは捉えられないことに加え,その他治療状況や症状経過等を勘案すれば,将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉えられないことから,自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断します。
第7の3 後遺障害の等級認定に関する説明資料
後遺障害診断書を提出した事案であれば,後遺障害に該当しない場合であっても作成されています。
② 損害の細目及びその積算根拠を記載した書面
→ 治療費,通院費,文書料,休業損害,慰謝料という損害項目ごとの支払金額及びその内容等が記載されています書類です。
自賠責保険からの支払額が,自賠責保険の限度額(例えば,傷害部分は120万円)に満たない場合に取り寄せる実益があります。
第8 高次脳機能障害
(1) 損害保険料率算出機構は,「高次脳機能障害に該当する可能性がある事案」について,受傷後の詳細な意識障害の推移,高次脳機能障害の内容・程度の照会,被害者側への日常生活状況の確認などの詳細な情報を得た上で,専門医を中心とする自賠責保険(共済)審査会高次脳機能障害専門部会が後遺障害等級を認定する仕組みを構築しており,これを「高次脳機能障害認定システム」といいます(損害保険料率算出機構HPの「脳外傷による高次脳機能障害の後遺障害認定」参照)。
(2) 損害保険料率算出機構作成の「脳外傷による高次脳機能障害の後遺障害認定について」には,「脳外傷による高次脳機能障害は,自動車事故などで脳が損傷され,一定期間以上,意識が障害された場合に発生し,CT・MRIなどの画像診断で脳損傷が認められることが特徴です。」などと書いてあります。
(3)ア 脳に器質的損傷があるとは,脳の損傷が原因であることについてMRI,CT等の画像所見がある場合をいい,①局所的に損傷を受ける場合(局所性脳損傷)(例えば,脳挫傷及び頭蓋内血腫)及び②全般的に損傷を受ける場合(びまん性脳損傷)があります。
イ びまん性軸索損傷(DAI)は,びまん性脳損傷のひとつで(脳震盪もびまん性脳損傷のひとつとされています),脳に広範な剪断力が加わることによって,軸索(指令を出すための長く伸びた繊維)に断裂が生じることをいいます(八文字社会保険労務士行政書士事務所HPの「びまん性軸索損傷の基礎知識」参照)。
2 高次脳機能障害に関して被害者請求をする場合に必要となる書類
(1) 高次脳機能障害に関して被害者請求をする場合に必要となる書類は以下のとおりです(交通事故電脳相談所HPの「実践 高次脳機能障害の被害者請求」参照)。
① 自賠責保険後遺障害診断書
② 神経系統の障害に関する医学的意見書
③ 脳損傷又はせき髄損傷による障害の状態に関する意見書
④ 頭部外傷後の意識障害についての所見
・ ①ないし③の書類は主治医が作成します。
・ ③の書類は本来,労災の書類ですが,高次脳機能障害の等級に関しては自賠責保険よりも労災保険の方が基準が明確ですから,作成した方がいいです。
・ ④の書類は初診時の医師が作成しますところ,被害者本人や家族の認識とは異なる軽めの評価がなされる可能性がある場合,消防署作成の救急報告書のほか,カルテに基づく弁護士の意見を記載した上で作成を依頼した方がいいです。
・ 『頭部外傷後の意識障害についての所見』ご記入にあたってを参照した方がいいです。
⑤ 日常生活状況報告表
・ 家族又はこれに代わる介護者が作成します。
(2) 弁護士による交通事故相談HPの「後遺障害診断書がなかったVさんが高次脳機能障害として7級の認定を獲得した事例」には,「Vさんは一人暮らしをしていたこともあり、ご家族も詳細にVさんの交通事故前の状況を把握できていませんでした。そのため、Vさんの友人にも協力してもらって、ご友人の方にも日常生活状況報告書を作成してもらいました。」と書いてあります。
3 高次脳機能障害において各能力評価を行う際の要点
4 画像所見陰性と外傷性脳損傷(TBI)
(1) 平成25年6月18日付け基労補発0618第1号の「考察」には以下の記載があります。
画像所見陰性のTBI症例で、昏睡を認めなかった症例は半数を超え、昏睡が有ったと明確にされた症例は1割に満たなかったので、画像陰性例では受傷時の意識障害の程度としては軽度の症例が多いと指摘できる。また、不明・記載なしが多いことから、画像所見陰性となるような軽症例においては受傷時の意識障害の有無を明確にすることには困難があり、取り扱いに課題が残る。
(2) 文中の「画像所見陰性の43例」というのは,画像所見は陰性であったが症状は高次脳機能障害診断基準(厚生労働省・国立障害者リハビリテーションセンター)に合致すると診断された54例のうち,主治医の診断等により確認できた外傷性脳損傷(TBI)を原因疾患とする43例のことです。
この43例につき,平成25年6月18日付け基労補発0618第1号の「結果」の「2.画像陰性例の分析」では,「受傷時に昏睡を認めた症例が3例(7.0%)、認めなかった症例が25例(58.1%)、不明・記載なしが15例(34.9%)であった。受傷時の意識障害については、認めた症例が23例(53.5%)、認めなかった症例が4例(9.3%)、不明・記載なしが16例(37.2%)であった。」と書いてあります。
5 高次脳機能障害と認知症の違い
秋田県高次脳機能障害相談・支援センターHPの「高次脳機能障害Q&A」には,以下の記載があります。
6 高次脳機能障害,身体性機能障害及び非器質性精神障害で使用する意見書の様式
「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」(平成15年8月8日基発第0808002号)の「2 的確な認定基準の運用の前提となる症状把握 」に以下の記載があります。
(1) にわ法律事務所HPに「高次脳機能障害等級認定基準」では,自賠責書式の診断書「神経系統の障害に関する医学的所見」の記載から,自賠責の何級に該当するかを簡単に判断する基準が書いてあります。
(2) 東京交通事故相談サポートに「自賠責保険における高次脳機能障害の認定要件」及び「交通事故による高次脳機能障害の立証方法」が載っています。
(3) J-STAGE HPに「高次脳機能障害を引き起こす外傷性脳損傷の画像評価-特にびまん性脳損傷慢性期の画像について-」が載っています。
(4)ア 非器質性精神障害に関しては,弁護士によるマンガ交通事故相談HPの「1 精神の疾患(精神障害)を理由とする後遺障害等級認定について」,及び弁護士法人アスタスク法律事務所HPの「非器質性精神障害についてのお役立ち情報」が参考になります。
イ 「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」(平成29年12月1日改正)49頁には,「神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。」と書いてあります。
(5) 鶴巻温泉病院HPに「高次脳機能障害とリハビリテーション」が載っています。
(6) 赤い本講演録編2012年67頁以下に「外傷による脳損傷の基礎知識」が載っています。
第9 「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」の記載内容
1 1頁の記載
一方、DTI、fMRI、MRスペクトロスコピー、SPECT、PET等に関する研究は、現在なお進行中であり、健常者との比較研究や脳器質性病変との関連、画像処理方法等も研究段階にある。 したがって、現在、これらの検査のみで、脳の器質的損傷の有無、認知・行動面の症状と脳の器質的損傷の因果関係あるいは障害程度を確定的に示すことはできない。しかし、当初のCT、MRIにおいて脳損傷が明らかであったものの、時間経過とともに損傷所見が消失した場合など脳外傷による障害の残存に疑義が生じる場合には、前記のようなCT、MRI以外の検査において整合性のある一貫した所見が窺えるものについては、補助的な検査所見として参考になる場合がある。
3 15頁及び16頁の記載(原文の下線部分は赤字表記としました。)
3 19頁の記載
第10 神経系統の機能及び精神の障害に関する障害等級認定基準
1 脳外傷等の後遺障害
(1) 高次脳機能障害及び身体機能性障害があります。
(2) 高次脳機能障害の場合,「意思疎通能力」,「問題解決能力」,「作業負荷に対する持続力・持久力」及び「社会行動能力」の4つの能力について,7段階についての判断結果を踏まえて障害等級(3級,5級,7級,9級,12級又は14級)が認定されます。
(3) 身体性機能障害の場合,麻痺の範囲(四肢麻痺,片麻痺又は単麻痺)及びその程度(高度,中等度又は軽度)についての判定結果を踏まえて障害等級(1級,2級,3級,5級,7級,9級又は12級)が認定されます。
2 非器質性精神障害
(1) うつ病やPTSD(外傷後ストレス障害)等,非器質性の精神障害については十分な治療の結果,完治には至らないものの,日常生活動作ができるようになり,症状がかなり軽快している場合には治癒の状態にあるものとして障害等級が認定されます。
(2) ① 「抑うつ状態」,「不安の状態」,「意欲低下の状態」,「慢性化した幻覚・妄想性の状態」,「記憶又は知的能力の障害」,「その他の障害(衝動性の障害,不定愁訴など)」といった「精神症状」が残った場合には,
② 「身辺日常生活」,「仕事・生活に積極性・関心をもつこと」,「通勤・勤務時間の遵守」,「普通に作業を持続すること」,「他人との意思疎通」,「対人関係・協調性」,「身辺の安全保持,危機の回避」,「困難・失敗への対応」といった「能力に関する判断項目」について,
③ 「できない」,「しばしば助言・援助が必要」,「時に助言・援助が必要」,「適切又は概ねできる」の4段階についての判定結果を踏まえて障害等級(9級,12級又は14級)が認定されます。
3 脊髄損傷の後遺障害
・ 麻痺の範囲(四肢麻痺,片麻痺又は単麻痺)及びその程度(高度,中等度又は軽度)についての判定結果を踏まえて障害等級(1級,2級,3級,5級,7級,9級又は12級)が認定されます。
4 外傷性てんかん
・ 発作の型により区分した上で発作回数によって障害等級(5級,7級,9級又は12級)が認定されます。
5 反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)
・ 関節拘縮,骨の萎縮,皮膚の変化(皮膚温の変化,皮膚の萎縮)の三つの症状が明らかに認められる場合,障害等級(7級,9級又は12級)が認定されます。
・ RSDは,カウザルギーに類似した外傷後に生じる強度の疼痛です。カウザルギーと異なり,例えば尺骨神経等の主要な末梢神経の損傷がなくても,微細な末梢神経の損傷が生じたことにより,外傷部位にカウザルギーと同様の疼痛が起こることがあるとされています。
第11 弁護士山中理司への問合せ方法
2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。