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任意保険の概要
第0 目次
第2 平成10年の自動車保険の自由化
第3 任意保険が適用されない場合
第4 任意保険の被保険者
第5 加害者が破産した場合でも被害者は任意保険の支払対象となること
第6 任意保険の加入率
第7 無保険車傷害保険
第8 自損事故保険
第9 搭乗者傷害保険
*0 市況かぶ全力2階建ブログに「自動車保険会社のイメージ、被害者側の弁護士目線でみるとこうなる 」が載っています。
*1 損害保険料率算出機構(GIROJ)HPの「自動車保険の概況」に,平成24年度版以降の自動車保険の概況が載っています。
*2 よくわかる!自動車保険を選ぶ際の注意点HPに「保険を使うか自費にするかの判断」が載っています。
*3 おとなの自動車保険HPに「ファミリーバイク特約」(125CC以下の原動機付自転車が対象です。)が載っています。
*4 ライフィHPに「法人契約の自動車保険の補償内容の決め方」が載っています。
*5 交通関係訴訟の実務(著者は東京地裁27民(交通部)の裁判官等)34頁ないし55頁に「任意保険の実務」が載っています。
第1 総論
1 任意保険には以下のものがあります。
① 対人賠償責任保険
② 対物賠償責任保険
③ 搭乗者傷害保険
④ 無保険車傷害保険
⑤ 自損事故保険
⑥ 人身傷害補償保険(平成10年10月1日に発売開始)
⑦ 車両保険
2(1)ア ①対人賠償責任保険及び②対物賠償責任保険は,被保険者が被保険自動車の所有,使用又は管理に起因して生じた偶然な事故によって他人に法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害(自賠法3条に基づく場合に限らず,民法709条等に基づく場合も含みます。)に対して支払われるものですから,「責任保険」といわれます。
この場合,対人賠償責任保険は被害者1名当たりの支払限度を約定しているのに対し,対物賠償責任保険は1事故当たりの限度額を約定しているのが普通です。
イ ③搭乗者傷害保険,④無保険車傷害保険,⑤自損事故傷害特約,⑥人身傷害補償保険,及び⑦車両保険は,被保険者が損害を被った場合に支払われるものです。
(2) ①及び③ないし⑥の保険は,被保険者が急激かつ偶然な外来の事故によって身体に傷害を負ったときに保険金を支払うことを目的とする「傷害保険」であす。
これに対して②及び⑦の保険は,保険の目的が物である「物保険」です。
(3) ④無保険車傷害保険,及び⑥人身傷害補償保険は実損てん補型傷害保険であるのに対し,③搭乗者傷害保険及び⑤自損事故保険は定額払い型傷害保険であります。
そのため,④及び⑥については請求権代位(=保険金を支払った保険会社に損害賠償請求権が移転すること。)があるのに対し,③及び⑤については請求権代位がありません。
3 ③搭乗者傷害保険及び⑥人身傷害補償保険の両方をかけていた場合,両方から二重に保険金を受領することができます。
4 ①及び②の保険は,被保険者が負担している損害賠償を任意保険会社が被保険者に代わって履行してくれるものですから,被保険者に損害賠償責任が発生しない場合,任意保険は一切,支払われません。
そのため,例えば,甲が信号待ちで車を停止しているところに,乙が後方から車をぶつけてきた場合,甲には何らの過失はなく,乙に対して何らの損害賠償責任もありませんから,甲の任意保険から乙に保険金が支払われることはありません。
5 日本損害保険代理業協会(日本代協)HPの「生活を取りまく危険と保険商品」との関係でいえば,車両保険は物保険となり,対人賠償責任保険及び対物賠償責任保険は責任保険となり,搭乗者傷害保険,無保険車傷害保険,自損事故保険及び人身傷害補償保険は人保険となります。
6 保険契約継続証は,保険契約の更新(継続)を証明するものであり,保険契約上の効力及び記載内容は保険証券と同じです(損保ジャパン日本興亜HPの「Q.保険契約継続証が届きましたが,保険証券は別に送付されますか?」参照)。
7 任意自動車保険HPの「インターネットで加入する通販型任意自動車保険とは」によれば,通販型任意自動車保険のメリットとして,①保険料が安い,②契約が簡単,③管理が簡単,④マイペースに慎重に吟味できる,⑤交通事故の解決までマイペースで進められるといったものがあります。
デメリットとして,①自己責任の覚悟や自立心が必要,②代理店のサービスが受けられない,③時間的な融通が利きづらい,④事故解決まで時間がかかりがちといったものがあります。
第2 平成10年の自動車保険の自由化
その後,金融システム改革のプランについて保険審議会でも審議が行われ,平成9年6月に報告が取りまとめられました。
この報告においても,保険会社間の適正な競争が促進され,消費者ニーズに柔軟にこたえる活発な商品開発が行われることが望ましいとの観点から,料率使用義務の廃止を中心とする自動車保険料率算定会制度の改革を実施することが適当である旨の提言がなされました。
これらを受けまして,金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律(平成10年6月15日法律第107号)が制定され,平成10年7月1日をもって,料率使用義務の廃止(=損害保険料率の自由化)がなされました。
2 平成10年の自動車保険の自由化以前には,保険商品は以下の4つに限定され,各保険会社の商品の内容は同一でした。
(a) SAP(Special Automobile Policy:自家用自動車総合保険)
→ ⑥人身傷害補償保険以外の保険がすべて組み込まれており,示談代行も付いていました。
(b) PAP(Package Automobile Policy:自動車総合保険)
→ ①ないし⑤の保険が組み込まれており,示談代行も付いていました。
(c) BAP(Basic Automobile Policy:自動車保険)
→ ①対人賠償責任保険,②対物賠償責任保険及び⑦車両保険を選んで個別に契約することができました。
示談代行は付いていませんでした。
(d) ドライバー保険
→ 自動車を所有していないものの,他人の自動車を借用して運転するというドライバーのリスクを担保する保険であり,①対人賠償責任保険及び②対物賠償責任保険を個別に契約することができました。
示談代行は付いていませんでした。
3 平成10年の自動車保険の自由化以後は,各保険会社が,色々な形で保険商品に様々な工夫をして差別化を図るようになってきています。
ただし,保険商品の主流は,以前からあるSAPに人身傷害補償保険を組み込んだ自動車総合保険でが,人身傷害補償保険が組み込まれたことにより,自損事故保険及び無保険車傷害保険が特約になりました。
SAPと異なる点は,必ずすべての保険を組み込む必要がないことです。
第3 任意保険が適用されない場合
第4 任意保険の被保険者
2 対人賠償責任保険及び対物賠償責任保険の場合の被保険者の範囲は,特約がない限り,通常は以下のとおりです。
① 記名被保険者
② 被保険自動車を使用又は管理中の以下のいずれかに該当する者
ア 記名被保険者の配偶者(内縁を含みます。以下同じ。)
イ 記名被保険者又はその配偶者の同居の親族
ウ 記名被保険者又はその配偶者の別居の未婚の子
③ 記名被保険者の承諾を得て被保険自動車を使用又は管理中の者(=許諾被保険者)
→ 記名被保険者の許諾は黙示のものも含まれますものの,無断転貸(=又貸し)に基づいて使用又は管理中の者は許諾被保険者とはなりません。
なお,自動車取扱業者が業務として被保険自動車を使用又は管理している場合は除きます。
④ 記名被保険者の使用者(=雇い主)
→ 使用者には,請負契約,委任契約又はこれらに類似の契約に基づき記名被保険者の使用者に準ずる地位にある者を含みます。
第5 加害者が破産した場合でも被害者は任意保険の支払対象となること
任意保険の約款上,被保険者である加害者が破産手続開始決定を受けた場合,被害者は加害者の任意保険会社に対する直接請求権を取得しますから,任意保険会社に対して損害賠償請求ができるようになります。
これに対して,自転車保険のように,保険契約の約款上,被保険者である加害者が破産手続開始決定を受けた場合に被害者が加害者の保険会社に対する直接請求権を取得する旨の定めがなかったとしても,被害者は,平成22年4月1日に施行された保険法22条1項に基づき,加害者の任意保険金請求権について特別の先取特権を有しています(保険法が施行される以前は,保険金請求権そのものは破産財団に属するため,破産管財人と被害者との間で和解を成立させる必要がありました。)。
よって,平成22年4月1日以降の交通事故である限り,被害者の損害賠償請求権が,保険契約に加入している加害者の破産によって踏み倒されることはありません。
第6 任意保険の加入率
1 全国
対人賠償責任保険が73.8%,対物賠償責任保険が73.8%,搭乗者傷害保険が34.0%,車両保険が43.2%,人身傷害補償保険が67.0%です。
2 大阪府
対人賠償責任保険が82.2%,対物賠償責任保険が82.4%,搭乗者傷害保険が39.7%,車両保険が49.6%,人身傷害補償保険が73.8%です。
第7 無保険車傷害保険
① 加害者が対人賠償責任保険に加入していない場合
② 加害者が対人賠償責任保険に加入しているものの,運転者の年齢条件等により保険が適用されない場合
③ 加害者が対人賠償責任保険に加入しているものの,被害者の損害額が保険の限度額を超過している場合
④ ひき逃げ,当て逃げ等により,加害者が特定できない場合
2(1) 無保険車傷害保険は,後遺障害又は死亡の場合にだけ適用されるのであって,ケガの治療費や休業損害といった傷害部分の損害には適用されません。
そのため,傷害部分の損害に対して支払われる保険金は,加害者の自賠責保険の120万円までとなります。
(2) 無保険車傷害保険は通常,人身傷害補償保険に付帯しています。
3 ①加害者が自賠責保険にすら加入していない場合,又は②ひき逃げ,当て逃げ等の場合において被害者が無保険者傷害保険に加入していない場合,被害者は政府の自動車損害賠償保障事業(政府保障事業)しか利用できません(自動車損害賠償保障法71条以下参照)。
政府保障事業の場合,自賠責保険に対する被害者請求よりも認定が厳しいですし,健康保険・労災保険等の社会保険からの給付がある場合,その金額は差し引かれますし,被害者に少しでも過失がある場合,支払ってもらえる金額が過失割合に応じて減ります(国土交通省HPにある自賠責保険ポータルサイトの「政府保障事業」参照)。
第8 自損事故保険
①単独事故の例としては,「ガードレールへの衝突」,「ハンドルを切り損ねた結果としての転落」があり,②自分に100%過失がある交通事故としては,赤信号で停車している車に追突した場合があります。
2 自損事故保険は,被保険自動車に乗車中の自損事故を支払対象とするものです。
そのため,被保険自動車に乗車中の交通事故に限られない人身傷害補償保険の方が適用される場面は広くなりますから,人身傷害補償保険にも加入している場合,自損事故保険は適用されることはありません。
3 自損事故保険は通常,被害者として受け取ることができる自賠責保険の金額よりも少ないですから,最低限の補償に過ぎません。
第9 搭乗者傷害保険
2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。