1 自動車運転死傷行為処罰法が施行された平成26年5月20日以降,交通事故直後に警察に提出した診断書を基準として,被害者の加療期間が約3週間以下の交通事故の場合,原則として,簡約特例書式による刑事記録が作成されます。
ただし,被疑者と被害者の供述が食い違ったり,加療期間1週間を超える被害者が処罰を望む意思を明確に示していたりした場合,特例書式による刑事記録が作成されます。
2(1) 「過失運転致傷等事件に係る簡約特例書式について」(平成26年5月14日付の警察庁交通局長・刑事局長通達) によれば,簡約特例書式による刑事記録の表題は,以下のとおりです。
様式第1号 送致書・捜査報告書
様式第2号 現場の見分状況書
様式第3号 被疑者供述調書
様式第4号 被害者供述調書
様式第5号 捜査報告書(継続)-被害者一覧表-
(2) 過失の認定に必要な事実に関して被疑者が否認するおそれがなく,かつ,被害者が警察署等に出頭しなかった場合,被害者供述調書に代えて,電話等で聴取した供述の内容を記載した捜査報告書が作成されることがあります。
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交通事故事件の刑事記録
第0 目次
第2 簡約特例書式の正確な適用範囲
第3 簡約特例書式作成上の特有の注意事項
第4 現場の見分状況書(簡約特例書式)の記載要領
第5 特例書式による刑事記録
第6 特例書式作成上の特有の注意事項
第7 実況見分調書(特例書式)の記載要領
第8 交通事故現場見取図の記載要領
第9 実況見分調書に関する犯罪捜査規範の条文
第10 送致及び送付に関する犯罪捜査規範の条文
*1 「犯罪事件受理簿等の様式について」(平成29年1月31日付の警察庁刑事局長通達)の犯罪事件受理簿,犯罪事件処理簿及び交通法令違反事件簿を見れば,警察が事件を受理する際,どういうことを確認するかが分かります。
*2 以下のページも参照して下さい。
① 交通事故事件の刑事記録の入手方法
② 交通事故被害者が警察に対応する場合の留意点
③ 検察庁関係の法令・書式,法務省の各種事務規程等
④ 裁判所の文書管理
*3 弁護士によるマンガ交通事故相談HPに「警察との関係」が載っています。
第1 簡約特例書式による刑事記録
第2 簡約特例書式の正確な適用範囲
「過失運転致傷等事件に係る簡約特例書式について」(平成26年5月14日付の警察庁交通局長・刑事局長通達)の「第2 簡約特例書式の適用範囲について」によれば,以下のとおりです。
なお,文中の「事実の重要な部分」とは,過失の認定に必要な事実をいいます。
過失運転致傷事件,自動車過失運転傷害事件,道路交通法第2条所定の車両又は路面電車(以下「自動車等」という。)による業務上過失傷害事件及び自転車運転又は自動車等のドアの開放に起因する(重)過失傷害事件のうち,被害者の受けた傷害の程度が約3週間以下の事件(加療期間が診断時において受傷日から起算して3週間と2日までの事件をいう。被害者が複数の場合は,最も重い傷害の程度が3週間と2日までの事件をいう。以下同じ。)及びこれに関連する道路交通法違反事件に適用する。
ただし,次に掲げる事由のいずれかに該当する事件は除くこととする。
1 外国人(日本語を理解する者を除く。)が被疑者又は被害者である事件
2 告訴又は告発に係る事件
3 被疑者を逮捕した事件
4 証拠品を押収した事件
5 事実の重要な部分について,被疑者が否認し,又は被疑者の供述と相被疑者若しくは被害者その他の参考人の供述が食い違う事件
6 無免許運転,酒酔い運転,酒気帯び運転(身体に制令で定める程度未満のアルコールを保有する状態にあったものを含む。)又は赤色信号無視(同信号の感化を含む。)のいずれかが事故原因となり,又はこれらを伴う事件
7 過労,薬物使用,薬物影響,病気その他の事由により正常な運転ができない状態での運転(居眠り運転を含む。)が事故原因となり,又はこれを伴う事件
8 次に掲げる違反のいずれかが事故原因となり,又はこれを伴う事件(当該違反が事故と無関係であることが明白な場合を除く。)
(1) 車両通行禁止場所通行
(2) 最高速度遵守義務の著しい違反(時速30キロメートル以上の速度超過をいう。)
(3) 追越しに関する義務違反
9 救護措置義務違反を伴う事件
10 事故不申告を伴う事件(現場における当事者間での不申告に関する合意等があったものを除く。)
11 人が住居の用に供し,又は人が現在する建物に自動車等を突入させた事件
12 社会の注目を引くなど事案の性質上本書式になじまない事件
13 被害者が処罰を望む意思を明確に示している事件
ただし,傷害の程度が約1週間以下の事件(加療期間が診断時において受傷日から起算して1週間と2日までの事件をいう。被害者が複数の場合は,最も重い傷害の程度が1週間と2日までの事件をいう。以下同じ。),及び傷害の程度が約1週間を超え,約2週間以下の事件(加療期間が診断時において受傷日から起算して2週間と2日までの事件をいう。被害者が複数の場合は,最も重い傷害の程度が2週間と2日までの事件をいう。以下同じ。)であって事故原因又は事故に伴う違反等が安全運転義務違反にとどまるものはこの限りではない。
14 被害者の受けた傷害の程度が約2週間を超え,約3週間以下の事件のうち,次のいずれかに該当するもの
(1) 次に掲げる違反のいずれかが事故原因となり,又はこれを伴う事件(当該違反が事故と無関係であることが明白な場合を除く。)
ア 赤色点滅信号無視(同信号の看過を含む。)
イ 通行区分違反
ウ 優先道路通行車両の進行妨害
エ 指定場所における一時停止義務違反
オ 電話の使用又はテレビ画像への脇見
カ 整備不良車両又は制動装置が故障している車両の運転
(2) 歩道,路側帯,横断歩道(直近1メートル以内を含む。),自転車横断帯(直近1メートル以内を含む。)又は安全地帯において,歩行者又は自転車乗車中の者に傷害を負わせた事件(自転車が通行することができることとされている歩道,路側帯及び自転車横断帯における自転車運転に起因する事件を除く。)
第3 簡約特例書式作成上の特有の注意事項
「過失運転致傷等事件に係る簡約特例書式の運用について」(平成26年5月14日付の警察庁交通局長・刑事局長通達) 添付の「簡約特例書式の運用要領」の「第1・2 簡約特例書式作成上の注意事項」によれば,簡約特例書式作成上の特有の注意事項は以下のとおりです。
(1) 書式使用上の留意事項
簡約特例書式を使用して,過失運転致傷等事件のほか道路交通法違反を同時に送致するか等の取扱いについては,別途定められたところによる。
(2) 送致期限
簡約特例書式による送致は,事件発生日から2ヶ月以内に行うものとする。
(3) 書類の編てつ順序
書類は左とじとし,その編てつ順序は次によること。
なお,被害者が複数の場合は,捜査報告書(継続)(様式第5号)を送致書・捜査報告書に添付すること。
ア 単独送致の場合
(ア) 送致書・捜査報告書
(イ) 現場の見分状況書
(ウ) 被疑者供述調書
(エ) 被害者供述調書又は被害者事情聴取捜査報告書
(オ) 診断書その他の書類
イ 一括送致の場合
2人以上を同時に送致する場合は,次の順序で編てつして送致書上部欄外に「2件2名」等と朱書きすること。
(ア) 送致書・捜査報告書(A者,B者の順)
(イ) 現場の見分状況書
(ウ) 被疑者供述調書(A者,B者の順)
(エ) 診断書その他の書類
なお,被害者供述調書又は被害者事情聴取捜査報告書を作成したときは,その調書又は捜査報告書は被疑者供述調書の次に編てつする。
(4) 関係書類の追送
ア 事件記録を送致した後に,新しい診断書又は示談書等が提出されたり,被害者の処罰意思が明確に示されたときには,捜査報告書等でその経緯・内容を明らかにし,速やかにこれを関係書類追送書(司法警察職員捜査書類基本書式例様式第57号)によって追送すること。
イ 検察官から,必要に応じ,縮尺交通事故現場見取図の作成,被疑者・被害者の再取調べ,診断書の再取得等の補充捜査の要請があった場合には,その要請に応じ補充捜査を実施し関係書類を追送すること。
また,少年事件について,家庭裁判所から審判のため縮尺交通事故現場見取図の作成等補充捜査の要請があった場合も,これに応じて捜査を尽くすこと。
第4 現場の見分状況書(簡約特例書式)の記載要領
第5 特例書式による刑事記録
1 自動車運転死傷行為処罰法が施行された平成26年5月20日以降,交通事故直後に警察に提出した診断書を基準として,被害者の加療期間が約3週間を超える交通事故の場合,特例書式による刑事記録が作成されます。
2 「過失運転致傷等事件に係る特例書式について」(平成26年5月14日付の警察庁交通局長・刑事局長通達) によれば,特例書式による刑事記録の表題は,以下のとおりです。
様式第1号(その1) 送致書
同 (その2) 被疑事実の要旨
様式第2号(その1) 実況見分調書
同 (その2)
様式第3号(その1) 交通事故現場見取図
様式第4号(その1) 被疑者供述調書
同 (その2)
様式第5号(その1) 被害者供述調書
同 (その2)
様式第6号(その1) 参考人供述調書
同 (その2) 供述調書継続用紙
第6 特例書式作成上の特有の注意事項
「過失運転致傷等事件に係る特例書式の運用について」(平成26年5月14日付の警察庁交通局長・刑事局長通達) 添付の「特例書式の運用要領」の「第1・2 特例書式作成上の注意事項」によれば,特例書式作成上の特有の注意事項は以下のとおりです。
(1) 書式使用上の留意事項
特例書式を使用して過失運転致傷事件,自動車運転過失傷害事件及び業務上過失傷害事件のほか,道路交通法,道路運送法,道路運送車両法,自動車損害賠償保障法,自動車の保管場所の確保等に関する法律違反等(以下「交通関係法令違反事件」という。)を同時送致するかどうの取扱いについては,別途定められたところによる。
(2) 書類の編てつ順序
書類は左とじとし,その編てつ順序は次によること。
ア 単独送致の場合
(ア) 送致書・捜査報告書
(イ) 実況見分調書
(ウ) 被疑者供述調書
(エ) 被害者供述調書
(オ) 参考人供述調書
(カ) 診断書その他の書類
イ 一括送致の場合
2件以上を同時に送致する場合は,次の順序で編てつして送致書上部欄外に「2件2名」等と朱書すること。
(ア) 送致書・捜査報告書(A者,B者の順)
(イ) 実況見分調書
(ウ) 被疑者供述調書(A者,B者の順)
(エ) 参考人供述調書
(オ) 診断書その他の書類
なお,被害者供述調書を作成したときは,その調書は被疑者供述調書の次に編てつすること。
(3) 関係書類の追送
事件記録を送致した後に,新しい診断書又は示談書等が提出された場合は,速やかにこれを関係書類追送書(司法警察職員捜査書類基本書式例様式第57号)によって追送すること。
第7 実況見分調書(特例書式)の記載要領
(ア) 前方の車両、歩行者等に対する事故であれば前方(右前方、左前方)、後方の車両、歩行者等に対する事故であれば後方(右後方、左後方)
見通し距離の基点となる地点は、立会人が現実に見通しを確認した地点とすることが望ましいが、それが困難な場合は、事故を回避するために必要な措置をとらなければならなかったと思われる地点(進路変更地点、減速開始地点、右左折の合図をした地点、警音器を吹鳴した地点等)とすること。
第8 交通事故現場見取図
第9 実況見分調書に関する犯罪捜査規範の条文
○警察官が交通事故現場の実況見分を行った際,被疑者,被害者その他の関係者の指示説明の範囲をこえて,特にその供述を実況見分調書に記載する必要がある場合,関係者の署名押印を求めてきますものの,署名押印は拒絶することができます(犯罪捜査規範105条2項前段・刑事訴訟法198条5項ただし書)。
第百四条 犯罪の現場その他の場所、身体又は物について事実発見のため必要があるときは、実況見分を行わなければならない。
第10 送致及び送付に関する犯罪捜査規範の条文
(送致及び送付の指揮)
(関連事件の送致及び送付)
(送致書及び送付書)
(送致又は送付後の捜査と追送)
(余罪の追送致(付))
(微罪処分ができる場合)
(微罪処分の報告)
(微罪処分の際の処置)
(犯罪事件処理簿)
2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。