第1 弁護人選任権
第2 弁護人選任の申出,並びに当番弁護士制度及び私選紹介弁護士制度
第3 国選弁護人の選任
第4 弁護人と被疑者・被告人との接見交通
第5 被疑者国選対象事件,国選付添人対象事件及び裁判員裁判対象事件
第6 刑事弁護における弁護士倫理
第7 刑事弁護に関する弁護士職務基本規程の条文
*1 以下の文書を掲載しています。
① 刑事事件に関する書類の参考書式について(平成18年5月22日付の最高裁判所事務総局刑事局長,総務局長,家庭局長送付)
② 夜間及び休日の未決拘禁者と弁護人等との面会等の取扱いについて(平成19年5月25日付の法務省矯正局長通達)
③ 弁護人選任権の告知及び弁護人の選任に係る事項の教示等について(平成28年6月28日付の最高裁判所刑事局第二課長の事務連絡)
*2 日弁連HPに「面会室内における写真撮影(録画を含む)及び録音についての意見書」(平成23年1月20日付)が載っています。
弁護人
第0 目次
第1 弁護人選任権
2 憲法34条前段は,身柄拘束被疑者の弁護人選任権を定めていますところ,刑訴法30条1項は,身柄拘束の有無を問わず,被疑者及び被告人の弁護人選任権を定めています。
3 刑訴法が認める弁護人には,①弁護士である弁護人(刑訴法31条1項,憲法37条3項「資格を有する弁護人」参照)及び②弁護士でない特別弁護人(刑訴法31条2項)があり,弁護士たる弁護人には私選弁護人及び国選弁護人があります。
4 弁護士は,被疑者及び被告人の防御権が保障されていることにかんがみ,その権利及び利益を擁護するため,最善の弁護活動に努めます(弁護士職務基本規程46条)。
5 弁護士は,被疑者及び被告人に対し,黙秘権その他の防御権について適切な説明及び助言を行い,防御権及び弁護権に対する違法又は不当な制限に対し,必要な対抗措置をとるように努めます(弁護士職務基本規程48条)。
6 およそ弁護人は,被告人のなし得る訴訟行為について,その性質上許されないものを除いては,個別的な特別の授権がなくても,被告人の意思に反しない限り,これを代理して行うことができるのであり,このことは,その選任者が被告人本人であるか刑訴法30条2項所定の被告人以外の選任権者であるかによって,何ら変わりはないというべきであり,上訴の申立をその例外としなければならない理由も認められません。
7(1) 公訴の提起前にした弁護人の選任は,弁護人と連署した書面を当該被疑事件を取り扱う検察官又は司法警察員に差し出した場合に限り,第一審においてもその効力を有します(刑訴法32条1項,刑訴規則17条,犯罪捜査規範133条)。
8(1) 被疑者の弁護人の数は,特別の事情があるものとして裁判所が弁護人の人数超過許可決定を出した場合を除き,各被疑者について3人を超えることができません(刑訴規則27条1項)。
9 公訴の提起後における弁護人の選任は,弁護人と連署した書面を差し出してこれをしなければなりません(刑訴規則18条)。
10 一の事件についてした弁護人の選任は,その事件の公訴の提起後同一裁判所に公訴が提起され,かつ,これと併合された他の事件についても,原則としてその効力を有します(刑訴規則18条の2)。
11(1) 公訴の提起後における弁護人の選任は,審級ごとにこれをしなければなりません(刑訴法32条2項)。
12(1) 被告人に数人の弁護人があるときは,主任弁護人を定める必要があります(刑訴法33条,刑訴規則19条及び20条)。
13 裁判所は,特別の事情があるときは,弁護人の数を各被告人について3人までに制限することができます(刑訴法35条,刑訴規則26条)。
第2 弁護人選任の申出,並びに当番弁護士制度及び私選紹介弁護士制度
2 当番弁護士制度及び私選弁護人照会制度
第3 国選弁護人の選任
2 被告人国選弁護人
3 被疑者国選弁護人
第4 弁護人と被疑者・被告人との接見交通
3 最高検察庁の接見対応通達
(1) 平成20年5月1日付の接見対応通達(次長検事通達),及び同日付の接見対応通達(総務部長通知)を掲載しています。
(2) 接見対応通達等の運用状況については,法務省が平成23年8月に作成した「取調べに関する国内調査結果報告書」に記載されています。
4 面会室内における写真撮影(録画を含む)及び録音
(1) 日弁連は,平成23年1月20日,「面会室内における写真撮影(録画を含む)及び録音についての意見書」を法務大臣及び警察庁長官に提出しており,PDFファイルには「意見の趣旨」として以下の記載があります。
(2) 最高裁は,平成28年6月15日,いわゆる竹内国家賠償請求訴訟の上告審で,原告一部勝訴の第一審判決を取り消し,請求をすべて棄却するとの東京高裁平成27年7月9日判決に対する上告及び上告受理申立を退ける決定をしました(日弁連HPの「面会室内での写真撮影に関する国家賠償請求訴訟の最高裁決定についての会長談話」(平成28年6月17日付))。
5 弁護人になろうとする者としての接見には制限があること
平成21年12月16日付の日弁連綱紀委員会議決の議決要旨は以下のとおりです(弁護士自治を考える会HPの「「立場濫用」で再審査を要求 日弁連,京都弁護士会に」参照)。
対象弁護士は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人になろうとする者に該当せず,かつ,「弁護人又は弁護人となろうとする者」以外の者との接見や書類の授受が禁止されていたにもかかわらず,自己が依頼を受けた被告人以外の利害対立のおそれがある他の共犯者と当該共犯者からの依頼がないにもかかわらず単に弁護人となる可能性があるとして接見した行為は,接見交通権の濫用であり,品位を失うべき非行に該当する。
6 接見指定権に関する判例
(7) 保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人等からあった場合に,その旨を未決拘禁者に告げないまま,保護室収容を理由に面会を許さない刑事施設の長の措置は,特段の事情がない限り,国家賠償法上違法となります(最高裁平成30年10月25日判決)。
第5 被疑者国選対象事件,国選付添人対象事件及び裁判員裁判対象事件
1 総論
(1) 罪名別各制度対象事件早見表(平成21年5月当時のもの)
外部HPの「罪名別各制度対象事件早見表」を見れば,被疑者国選対象事件が拡大したり,裁判員制度が導入されたりした平成21年5月21日時点において,どの罪名の事件が,①被疑者国選対象事件(死刑,無期又は長期3年を超える懲役・禁錮),②国選付添人対象事件(死刑,無期若しくは短期2年以上の懲役・禁錮,又は故意犯の死亡結果)及び③裁判員裁判対象事件(死刑,無期の懲役・禁錮又は法定合議かつ故意犯の死亡結果)に該当するかが分かります。
(2) 少年が犯罪を犯した場合の適用される弁護制度
少年が犯罪を犯した場合,以下の制度の対象となります(法務省HPの「現行法による国選弁護・国選付添製度の概要」参照)。
① 捜査段階
・ 被疑者国選弁護制度(刑訴法37条の2)
② 家庭裁判所に事件が係属している段階
・ 国選付添人制度
→ (a)検察官関与決定に伴うものにつき少年法22条の3第1項,(b)家庭裁判所の裁量によるものにつき少年法22条の3第2項,(c)被害者等の審判傍聴に伴うものにつき少年法22条の5第2項
③ 検察官送致決定後,起訴される前の段階
・ 被疑者国選弁護制度(刑訴法37条の2)
④ 起訴された後の段階
・ (被告人)国選弁護制度(刑訴法36条,37条)
2 被疑者国選対象事件
(1) 被疑者国選弁護制度は,日本司法支援センターが本格的に業務を開始した平成18年10月2日に開始しました。
開始当時の被疑者国選対象事件は,死刑,無期又は短期1年を超える懲役・禁錮だけでした。
(2) 平成21年5月21日,被疑者国選対象事件が死刑,無期又は長期3年を超える懲役・禁錮となりました。
(3) 平成30年6月1日, 勾留状が発せられている身柄事件の全部が被疑者国選弁護人対象事件となりました。
(4) 「被疑者の逮捕」,「被疑者及び被告人の勾留」も参照してください。
3 国選付添人対象事件
(1) 平成13年4月1日,検察官関与決定があった場合,必ず国選付添人が付されることとなりました(少年法22条の3第1項・22条の2第1項)。
ただし,平成13年4月1日から平成18年3月31日までにつき,検察官関与決定があった100人中,国選付添人が付されたのは25人だけです(最高裁HPの「平成12年改正少年法の運用の概況」8頁)。
(2) 平成19年11月1日,死刑,無期若しくは短期2年以上の懲役・禁錮,又は故意犯の死亡結果が,「裁量的な」国選付添人対象事件となりました(少年法22条の3第2項及び第1項・22条の2第1項)。
ただし,その選任数は年間300人から500人程度に過ぎず(少年鑑別所に収容された少年は年間約1万人以上),被疑者国選対象事件と国選付添人対象事件の範囲が異なるため,家裁送致後,被疑者国選弁護人が引き続き国選付添人として活動できないという問題が生じていました(日弁連HPの「全面的国選付添人制度の実現(全面的国選付添人制度実現本部)参照」参照)。
(3)ア 平成26年6月18日, 死刑,無期又は長期3年を超える懲役・禁錮が,「裁量的な」国選付添人対象事件となりました(少年法22条の3第2項及び第1項・22条の2第1項)。
これにより,被疑者国選対象事件と国選付添人対象事件の範囲が一致することとなりました。
イ 日弁連によれば,少年鑑別所に収容され身体拘束された少年の約8割について,裁量的に国選付添人が選任されることとなりました(日弁連HPの「全面的国選付添人制度の実現(全面的国選付添人制度実現本部)」参照)。
(4) 「少年事件」も参照してください。
4 裁判員裁判対象事件
(1) 裁判員裁判は平成21年5月21日に開始しました。
(2) 裁判員裁判対象事件は, 死刑,無期の懲役・禁錮又は法定合議かつ故意犯の死亡結果です(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項)。
(3) 「公判手続」も参照してください。
第6 刑事弁護における弁護士倫理
(1) 弁護士が,事件の受任及び処理に当たり,自由かつ独立の立場を保持するように努める(基本規程20条)とは,弁護士は職務を遂行するに当たって,専門家として委任の趣旨の範囲内において広い裁量権が認められており,また,公共的役割を担う者として,依頼者(刑事事件の場合は,被疑者・被告人)の恣意的要求をただそのまま受け容れ,これに盲従するのみであってはならないこと,したがって,職務において依頼者に誠実かつ忠実でなければならないが,これに拘束されるものではないことを意味するものである。
もとより依頼者の依頼や指示が不当又は違法な場合に弁護士がこれに応じるべきではないが,被告人の主張が弁護人からみて法的に通らない内容であることが直ちに上記場合に当たるとはいえない。
弁護人は法律の専門家として被告人の主張を検察官や裁判所が理解しやすいように法的に適切に構成することが求められているのであって,弁護人のそうした活動が弁護人の自由・独立を制約するものにはなり得ない。
(2) 消極的真実義務とは,弁護士が,偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし,又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない(基本規程75条)ということであり,控訴審の弁護人が被告人の意思にかなうよう,弁護活動として,1審で取り調べられた証人の証言の信用性について疑問を提示したり,裁判所の判断の問題点を指摘したりすることは何ら消極的真実義務に反するものではない。
第7 刑事弁護に関する弁護士職務基本規程
(刑事弁護の心構え)
第四十六条 弁護士は、被疑者及び被告人の防御権が保障されていることにかんがみ、その権利及び利益を擁護するため、最善の弁護活動に努める。
(接見の確保と身体拘束からの解放)
第四十七条 弁護士は、身体の拘束を受けている被疑者及び被告人について、必要な接見の機会の確保及び身体拘束からの解放に努める。
(防御権の説明等)
第四十八条 弁護士は、被疑者及び被告人に対し、黙秘権その他の防御権について適切な説明及び助言を行い、防御権及び弁護権に対する違法又は不当な制限に対し、必要な対抗措置をとるように努める。
(国選弁護における対価受領等)
第四十九条 弁護士は、国選弁護人に選任された事件について、名目のいかんを問わず、被告人その他の関係者から報酬その他の対価を受領してはならない。
2 弁護士は、前項の事件について、被告人その他の関係者に対し、その事件の私選弁護人に選任するように働きかけてはならない。 ただし、本会又は所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 刑事弁護に関する弁護士職務基本規程のその他の条文は以下のとおりです。
2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。