1 総論
(1) レセプトとは,患者が受けた診療について,医療機関(病院,診療所,薬局)が保険者に請求する医療費の明細書をいい,診療報酬明細書(医科,歯科の場合),又は調剤報酬明細書(薬局における調剤の場合)ともいわれます。
ただし,昭和51年11月1日施行の
療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令(略称は「請求省令」です。)5条1項では,診療報酬請求書及び診療報酬明細書並びに調剤報酬請求書及び調剤報酬明細書をレセプトと定義しています。
(2) レセプトを作成するコンピューターは,レセプトコンピューター(=レセコン)といわれます。
(3) 病院等の医療機関は,被保険者である患者ごとにカルテを作り,傷病名,投薬,注射等の診療内容を診療録(=カルテ)に記録します。
そして,公的医療保険の場合,この診療録から被保険者ごとに1か月単位で集約した上で診療報酬請求書又は調剤報酬請求書を作成し,診療報酬明細書又は調剤報酬明細書を添えて,毎月10日までに,医療機関の所在する①各都道府県の国民健康保険団体連合会(例えば,大阪府国民健康保険団体連合会),又は②社会保険診療報酬支払基金の都道府県支部(例えば,大阪支部)に提出します。
レセプトは,審査支払機関の審査を経た上で,最終的には,保険者に送られます。
(4)ア レセプト病名(保険病名,疑い病名)は,疾病を疑って検査等を行い,疾病の疑いが晴れた場合でも,検査に対応する病名の記載がないと検査料の請求が認められないため,慣例として記載されています(
レセプト代行サービスのスマイルHPの
「レセプト病名、疑い病名の転帰はいつしますか?」参照)。
イ 転帰とは,疾病・ケガ等の治療における症状の経過・結果をいい,治癒した場合は「治癒」,死亡した場合は「死亡」,治癒していないが当該治療を見合わせたり,放置しても大丈夫な場合は「中止」,店員した場合は「転院」などと記載されます(
看護ルーHPの
「転帰」参照)。
2 レセプトの発行単位及び主なレセプトの種類(厚生労働省HPの
「第1章 レセプトとは」と題する文書(株式会社JMDC作成)参照)
(1) レセプトは一人一人の患者ごと,受診する医療機関ごと,請求単位の1ヶ月後と,レセプトの種類ごとに発行されます。
そのため,一人の患者に対して1枚とは限らず,複数発行されている場合があります。
(2) 主なレセプトの種類として以下のものがあります。
① 医療機関から発行される医科入院レセプト及び医科入院外レセプト・ 「傷病名」欄には,疑い病名,診療開始日,診療実日数等が記載されます。
疑い病名につき,検査等で受診した際に傷病に(疑い)と記載された病名を示します。
診療開始日につき,当該医療機関において対象傷病ごとに診療を開始した年月日を示します。
診療実日数につき,当該医療機関における入院日数,外来受診回数を示します。
・ 「摘要」欄には,投与量,投与日数,処方回数,診療区分等が記載されます。
投与量につき,レセプトに記載される処方量をいい,内用薬は1日の投与量,注射・外用薬は1回の投与量を示します。
投与日数につき,内用薬は投与日数,注射・外用薬は処方回数を示します。
診療区分につき,11初診,12再診,20投薬,30注射,40処置,50手術,60検査,70画像診断等と記載されます。
② 調剤薬局から発行される調剤レセプト・ 「医療機関」欄には,医師機関名(施設ID),所在地,医師名,医師標榜診療科等が記載されます。
・ 「処方」欄には,処方医師番号,投与量・投与日数・処方回数等が記載されます。
投与量につき,内用薬は1日の投与量,注射・外用薬は1回の投与量が記載されます。
投与日数・処方回数につき,内用薬は投与日数,注射・外用薬は処方回数が記載されます。
③ 歯科から発行される歯科レセプト④ 急性期病院で用いるDPCレセプト3 電子レセプト請求
(1) レセプト電算処理システムに参加している医療機関は,電子レセプト請求を行います。
電子レセプト請求には,①オンライン請求(=電子情報処理組織の使用による請求),及び②電子媒体による請求(=光ディスク等を用いた請求)があります。
なお,レセプト電算処理システムは,保健医療情報システム検討会が,厚生労働省に対し,平成13年12月26日に提言した
「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」で言及されていたものです。
(2) 電子レセプト請求が義務づけられている保険医療機関又は保険薬局については,平成22年4月1日以降,医療費の明細書の交付が義務づけられるようになりました(
保険医療機関及び保険医療養担当規則5条の2第2項)。
(3) ①レセコンを使用していない保険医療機関又は保険薬局(請求省令5条),及び②常勤の保険医,保険薬剤師が全員,65歳以上である保険医療機関である診療所又は保険薬局(請求省令6条)を除き,請求省令に基づき,平成23年4月1日以降,電子レセプト請求が義務づけられるようになりました。
(4)
東京都国民健康保険団体連合会HPの
「診療(調剤)報酬明細書等の無償配布について※平成30年3月30日にて終了」には,「国保連合会では、診療(調剤)報酬明細書等を保険医療機関等へ配布してまいりましたが、国保連合会における診療報酬等の電子レセプト等が9割以上に達している状況を鑑み、診療(調剤)報酬明細書等の配布について、平成30年3月30日(金)をもって、終了させていただきます。」と書いてあります。
4 レセプトの開示請求(3) 厚生労働省HPに以下の通達が載っています。
①
診療報酬明細書等の被保険者等への開示について(平成17年3月31日)(保国発第0331009号)②
診療報酬明細書等の開示の取扱いについて〔国民健康保険法〕(平成23年6月23日)(保国発0623第1号/保高発0623第1号)③
診療報酬明細書等の開示の取扱いについて〔高齢者の医療の確保に関する法律〕(平成23年6月23日)(保国発0623第1号/保高発0623第1号)(2)ア
大阪市HPに
「診療報酬明細書等の開示に係る取扱要領」(国民健康保険)及び
「診療報酬明細書等の開示に係る取扱要領」(生活保護)が載っています。
レセプトというのは,診療報酬明細書,調剤報酬明細書,施設療養費明細書及び(老人)訪問看護療養費明細書をいうとされています。
イ
大阪府後期高齢者医療広域連合HPの
「情報公開・個人情報保護制度」に,診療報酬明細書(レセプト)の開示請求手続が書いてあります。
(3) 大阪市HPの
「診療報酬明細書等の開示事務に係るQ&A」及びに以下の記載があります。
① 診療報酬明細書等とは、病院と保険者間における金銭の請求書であると同時に、病院を名義人とする権利義務に関する書類であり、診療録や診断書のような医学上の事実証明のための文書ではないので、診療内容に係る照会には答えることができない。
② 診療録は、診療に関する情報を記載したもので、病院等が保存を義務づけられたものである。診療報酬明細書等は、その診療内容のうち保険診療に係る費用の請求書であるため、必ずしも診療内容のすべてが記載されていない場合もある。
5 診療報酬の改定(1)ア 厚生労働大臣は,2年に1回,中央社会保険医療協議会(=中医協)の答申に基づき,診療報酬の改定を行っています。
イ 中医協は,社会保険医療協議会法(昭和25年3月31日法律第47号。昭和25年4月1日施行)に基づき設置されており,①支払側委員7人,②診療側委員(=医師,歯科医師及び薬剤師を代表する委員)7人及び③公益委員6人で構成されています。
(2) 厚生労働省HPの
「医療保険」に,平成22年度以降の診療報酬改定が載っています。
6 その他(1)
Tech Target HPの
「レセプトコンピュータ一覧」によれば,レセプトコンピュータ(レセコン)として,アップルドクターのアーチャンレセプト2,ワイズマンの医療事務管理システム,日本医師会のORCA(日医標準レセプトソフト(日レセ))等があります。
(2) 国民健康保険診療報酬明細書(レセプト)に記録された個人の診療に関する情報について,実際に受けた診療の内容と異なることを理由として個人情報の訂正の請求をすることはできません(
最高裁平成18年3月10日判決)。