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中間利息控除係数及び生活費控除
第0 目次
第2 中間利息控除の基準時
第3 就労可能年数とライプニッツ係数
第4 生活費控除
第5 自賠責保険ポータルサイトHPの「交通事故に関するお役立ち情報」
*1 法務省HPの「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」(平成29年11月2日付)に,新旧対照条文,改正の概要,Q&A,主な改正事項,重要な実質改正事項が載っています。
*2 ヤフーニュースに「交通事故による2018年の死者数、前年から162人減少して3532人に」(平成31年1月4日付)が載っています。
*3 交通事故に関する赤い本講演録2007年・171頁ないし208頁に「損害算定における中間利息控除の基準時」が載っています。
*4 交通関係訴訟の実務(著者は東京地裁27民(交通部)の裁判官等)に161頁ないし177頁に「間接損害の諸問題2(被害者の近親者の損害)」が載っています。
第1 中間利息控除係数
1(1) 損害賠償額の算定に当たり,被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は,民事法定利率である年5%による必要があります(最高裁平成17年6月14日判決)。
(2) 民法404条において民事法定利率が年5%と定められたのは,民法の制定に当たって参考とされたヨーロッパ諸国の一般的な貸付金利や法定利率,我が国の一般的な貸付金利を踏まえ,金銭は,通常の利用方法によれば年5%の利息を生ずべきものと考えられたからです(最高裁平成17年6月14日判決)。
2(1) 中間利息控除係数については,主なものとしてライプニッツ係数(複利計算した係数)及びホフマン係数(単利計算した係数)があり,かつては,原則としてライプニッツ係数を採用する東京方式,及び原則としてホフマン係数を採用する大阪方式といった違いがありました。
そして,最高裁は,ライプニッツ係数を用いた場合であっても,ホフマン係数を用いた場合であっても,いずれも不合理とはいえないと判示していました(ライプニッツ係数につき最高裁昭和53年10月20日判決及び最高裁昭和56年10月8日判決,ホフマン係数につき最高裁平成2年3月23日判決及び最高裁平成22年1月26日判決(ウエストローに掲載))。
しかし,逸失利益の算定方式において最も重要な要素をなす中間利息控除係数について,東京方式と大阪方式のいずれの算定方法を採用するかによって,特に幼児,生徒,学生等の若年者の逸失利益の算定額に大きな差異が生じる結果となり,社会問題となっていました(8歳の少年であっても逸失利益が認められることにつき最高裁昭和39年6月24日判決参照)。
そこで,交通事故による損害賠償請求訴訟を専門的に扱う東京地裁民事第27分,大阪地裁第15民事部及び名古屋地裁民事第3部が共同で,平成11年11月22日,「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」(いわゆる「3庁共同提言」)を発表した結果,中間利息控除係数としては,ライプニッツ係数にほぼ一本化されるようになりました。
(2) 最高裁平成22年1月26日判決の原審である札幌高裁平成20年4月18日判決は,中間利息控除の方法としてホフマン係数を採用し,最高裁平成22年1月26日判決は,札幌高裁判決を結論において是認できるとしました。
そのため,東京地裁,大阪地裁及び名古屋地裁以外の裁判所の場合,中間利息控除係数としてホフマン係数が使用されることがないわけではありません。
(3) 最高裁平成17年6月14日判決は,中間利息の割合について判示したものであって,中間利息控除の方法については何ら触れていません(最高裁平成22年1月26日判決参照)。
3)ア 民法の一部を改正する法律(平成29年6月2日法律第44号)による改正後の民法404条2項は,法定利率は年3%であるとしています。
そのため,中間利息控除係数は大幅に変わります。
イ 法務省HP「民法の一部を改正する法律案」に「新旧対象条文」及び「修正に係る新旧対象条文」(付則15条2項だけが修正されたもの)が載っています。
(2) 改正民法417条の2第1項は,「将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。」と定めています。
そのため,年3%による中間利息控除の対象となる交通事故は,改正民法が施行された後(多分,2020年4月1日以後)に発生した交通事故であることとなります。
第2 中間利息控除の基準時
2 大阪地裁では,以下の理由に基づき,原則として,症状固定時を基準としています。
① 遅延損害金が事故時から発生することを考えると,事故時に現価評価するのが正当であるとも思えるものの,必ずしも遅延損害金と合わせる必然性はない。
② 逸失利益が具体的に発生するのは症状固定時である。
③ 事故時の見解を徹底した場合,治療費,交通費,休業損害等についても,事故日から支払日までの中間利息を控除して,事故時に現価評価すべきこととなるものの,そのような運用はされていない。
第3 就労可能年数とライプニッツ係数
就労可能年数としては,54歳未満の者については,67歳から被害者の年齢を控除した年数とし,54歳以上の者については,平均余命年数の1/2とし,端数は切り上げられています。
(2) 大阪地裁第15民事部が使用している就労可能年数とライプニッツ係数表の場合,男性と女性の平均余命の違いを考慮しています。
そのため,54歳以上の男性の場合,平均余命年数の端数が切り上げられている分,自賠責保険のライプニッツ係数の方が有利となるのに対し,49歳以上の女性の場合,大阪地裁第15民事部のライプニッツ係数の方が有利となります。
2 被害者が18歳以上である場合,自賠責保険のライプニッツ係数は,性別を問わず以下のとおりです。
18歳の場合,就労可能年数は49年だから,ライプニッツ係数は18.169
19歳の場合,就労可能年数は48年だから,ライプニッツ係数は18.077
20歳の場合,就労可能年数は47年だから,ライプニッツ係数は17.981
21歳の場合,就労可能年数は46年だから,ライプニッツ係数は 17.880
22歳の場合,就労可能年数は45年だから,ライプニッツ係数は 17.774
23歳の場合,就労可能年数は44年だから,ライプニッツ係数は 17.663
24歳の場合,就労可能年数は43年だから,ライプニッツ係数は 17.546
25歳の場合,就労可能年数は42年だから,ライプニッツ係数は 17.423
26歳の場合,就労可能年数は41年だから,ライプニッツ係数は 17.294
27歳の場合,就労可能年数は40年だから,ライプニッツ係数は 17.159
28歳の場合,就労可能年数は39年だから,ライプニッツ係数は 17.017
29歳の場合,就労可能年数は38年だから,ライプニッツ係数は 16.868
30歳の場合,就労可能年数は37年だから,ライプニッツ係数は 16.711
31歳の場合,就労可能年数は36年だから,ライプニッツ係数は 16.547
32歳の場合,就労可能年数は35年だから,ライプニッツ係数は 16.374
33歳の場合,就労可能年数は34年だから,ライプニッツ係数は 16.193
34歳の場合,就労可能年数は33年だから,ライプニッツ係数は 16.003
35歳の場合,就労可能年数は32年だから,ライプニッツ係数は 15.803
36歳の場合,就労可能年数は31年だから,ライプニッツ係数は 15.593
37歳の場合,就労可能年数は30年だから,ライプニッツ係数は 15.372
38歳の場合,就労可能年数は29年だから,ライプニッツ係数は 15.141
39歳の場合,就労可能年数は28年だから,ライプニッツ係数は 14.898
40歳の場合,就労可能年数は27年だから,ライプニッツ係数は 14.643
41歳の場合,就労可能年数は26年だから,ライプニッツ係数は 14.375
42歳の場合,就労可能年数は25年だから,ライプニッツ係数は 14.094
43歳の場合,就労可能年数は24年だから,ライプニッツ係数は13.799
44歳の場合,就労可能年数は23年だから,ライプニッツ係数は 13.489
45歳の場合,就労可能年数は22年だから,ライプニッツ係数は 13.163
46歳の場合,就労可能年数は21年だから,ライプニッツ係数は 12.821
47歳の場合,就労可能年数は20年だから,ライプニッツ係数は 12.462
48歳の場合,就労可能年数は19年だから,ライプニッツ係数は 12.085
49歳の場合,就労可能年数は18年だから,ライプニッツ係数は11,690
50歳の場合,就労可能年数は17年だから,ライプニッツ係数は 11.274
51歳の場合,就労可能年数は16年だから,ライプニッツ係数は 10.838
52歳の場合,就労可能年数は15年だから,ライプニッツ係数は 10.380
53歳の場合,就労可能年数は14年だから,ライプニッツ係数は 9.899
54歳の場合,就労可能年数は14年だから,ライプニッツ係数は 9.899
55歳の場合,就労可能年数は14年だから,ライプニッツ係数は 9.899
56歳の場合,就労可能年数は13年だから,ライプニッツ係数は 9.394
57歳の場合,就労可能年数は13年だから,ライプニッツ係数は 9.394
58歳の場合,就労可能年数は12年だから,ライプニッツ係数は 8.863
59歳の場合,就労可能年数は12年だから,ライプニッツ係数は 8.863
60歳の場合,就労可能年数は12年だから,ライプニッツ係数は 8.863
61歳の場合,就労可能年数は11年だから,ライプニッツ係数は 8.306
62歳の場合,就労可能年数は11年だから,ライプニッツ係数は 8.306
63歳の場合,就労可能年数は10年だから,ライプニッツ係数は7.722
64歳の場合,就労可能年数は10年だから,ライプニッツ係数は 7.722
65歳の場合,就労可能年数は10年だから,ライプニッツ係数は 7.722
66歳の場合,就労可能年数は9年だから,ライプニッツ係数は 7.108
67歳の場合,就労可能年数は9年だから,ライプニッツ係数は 7.108
68歳の場合,就労可能年数は8年だから,ライプニッツ係数は 6.463
69歳の場合,就労可能年数は8年だから,ライプニッツ係数は 6.463
70歳の場合,就労可能年数は8年だから,ライプニッツ係数は 6.463
71歳の場合,就労可能年数は7年だから,ライプニッツ係数は 5.786
72歳の場合,就労可能年数は7年だから,ライプニッツ係数は 5.786
73歳の場合,就労可能年数は7年だから,ライプニッツ係数は5.786
74歳の場合,就労可能年数は6年だから,ライプニッツ係数は 5.076
75歳の場合,就労可能年数は6年だから,ライプニッツ係数は 5.076
76歳の場合,就労可能年数は6年だから,ライプニッツ係数は 5.076
77歳の場合,就労可能年数は5年だから,ライプニッツ係数は 4.329
78歳の場合,就労可能年数は5年だから,ライプニッツ係数は 4.329
79歳の場合,就労可能年数は5年だから,ライプニッツ係数は 4.329
80歳の場合,就労可能年数は5年だから,ライプニッツ係数は 4.329
81歳の場合,就労可能年数は4年だから,ライプニッツ係数は 3.546
82歳の場合,就労可能年数は4年だから,ライプニッツ係数は 3.546
83歳の場合,就労可能年数は4年だから,ライプニッツ係数は3.546
84歳の場合,就労可能年数は4年だから,ライプニッツ係数は 3.546
85歳の場合,就労可能年数は3年だから,ライプニッツ係数は 2.723
86歳の場合,就労可能年数は3年だから,ライプニッツ係数は 2.723
87歳の場合,就労可能年数は3年だから,ライプニッツ係数は 2.723
88歳の場合,就労可能年数は3年だから,ライプニッツ係数は 2.723
89歳の場合,就労可能年数は3年だから,ライプニッツ係数は 2.723
90歳の場合,就労可能年数は3年だから,ライプニッツ係数は 2.723
91歳の場合,就労可能年数は2年だから,ライプニッツ係数は 1.859
92歳の場合,就労可能年数は2年だから,ライプニッツ係数は 1.859
93歳の場合,就労可能年数は2年だから,ライプニッツ係数は1.859
94歳の場合,就労可能年数は2年だから,ライプニッツ係数は 1.859
95歳の場合,就労可能年数は2年だから,ライプニッツ係数は 1.859
96歳の場合,就労可能年数は2年だから,ライプニッツ係数は 1.859
97歳の場合,就労可能年数は2年だから,ライプニッツ係数は 1.859
98歳の場合,就労可能年数は2年だから,ライプニッツ係数は 1.859
99歳の場合,就労可能年数は2年だから,ライプニッツ係数は 1.859
100歳以上の場合,就労可能年数は1年だから,ライプニッツ係数は 0.952
第4 生活費控除
1 死亡逸失利益を算定する場合,生活費控除率を認定する必要があります(最高裁昭和39年6月24日判決参照)。
なぜなら,人は生きていれば生活を営むための費用が必要ですので,いわゆる損益相殺の一環として生活費を控除する必要があるからです。
2 自賠責保険では,生活費を立証できればこれを控除することになりますものの,立証困難な場合,被扶養者がいるときは認定された基礎収入の35%,被扶養者がいないときは50%を控除します。
3 大阪地裁では,一家の支柱(=被害者の世帯が主としてその被害者の収入によって生計を維持していた場合)及び女性は30%から40%,その他は50%の生活費控除率とされています。ただし,年少女子につき,男女を合わせた全労働者の平均賃金を採用する場合,生活費控除率は45%とされています。
4(1) 生活費控除率は調整機能的な役割を担っており,一家の支柱の生活費控除率が低くなるのは,残された遺族の生活保障の観点を重視しているからです。
また,女性の生活費控除率を低くしているのは,基礎収入が男性より低いことを考慮したからであり,男性と同程度の給与を取得している場合,男性と同様に考えることができます。
(2) 年少女子につき,賃金センサスの男女を合わせた全労働社の平均賃金を採用する場合,生活費控除率を45%程度とするのは,40%以下にした場合,男性で生活費控除率を50%とした場合よりも逸失利益額が大きくなるからです。
5 年金収入のみの者については,年金の逸失利益が認められる場合,年金の性格からして,収入に占める生活費の割合が高いと考えられることから,生活費控除率を通常より高くされることが多いです。
6 重度後遺障害の場合,生活費控除をする裁判例が少数例ながら存在します。
しかし,大阪地裁では,寝たきりの状態であっても,人としての楽しみをもてるような生活をするために健常者に劣らない生活費が必要であると考えることができることにかんがみ,原則として,生活費控除はしません。
第5 自賠責保険ポータルサイトHPの「交通事故に関するお役立ち情報」
3 国土交通大臣に対する申出様式
4 その他
2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。